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~家庭における食料危機対策支援ブログ~

食料危機対策の必要性(1) 物流ストップ!そのとき日本は食料危機に陥る

みなさん、こんにちは。
先進国である日本で食料危機が発生するようなことは、現状では考えにくいと思います。しかし、食料やエネルギーの多くを輸入に頼り、自然災害の多い日本は、将来、食料危機が発生するリスクの高い国ともいえます。それでは、どのような場合に日本で食料危機が発生するのでしょうか。


◇近年出版された食料危機、震災、有事関係の出版物


・食料危機の発生要因
食料危機や食料安全保障の議論においては、様々な分析の切り口があります。大きな切り口としては、経済的アクセス/物理的アクセスの2つの要素に分ける*1、平時/有事の2つの次元に分け、さらに有事のシナリオとして輸入途絶/国内生産障害に大別(その同時発生も想定)する*2などがあります。

日本は経済大国であり、また、グローバル経済の発展した現在、経済的アクセスや平時における問題により食料危機が発生する可能性は低いといってよいでしょう。しかし、食料やその生産・加工・物流を支えるエネルギーの「物流」に大きな滞りが生じれば、食料危機が発生します。有事発生で輸入が大幅に減少する、または大規模自然災害で国内の物流が長期間停滞するような場合などです。この場合、急激に食料危機に陥る可能性があり、事前の対策準備なしには対処が困難です。

農林水産省によるリスク検証
農林水産省ではリスクマネジメントの国際基準「ISO31000」に準拠して、食料の安定供給に影響を及ぼす可能性のある様々な要因(リスク)を洗い出し、包括的な検証をすることで食料の安定供給に関するリスク検証を行っています*3。この検証は、近年の新型コロナウイルスの感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻などの新たなリスク発生による食料安全保障上の懸念の高まりから実施されたものです。

同検証では対象として食品27品目を基本とした上で、食品産業(4業種)と林業の品目も加えた32品目を対象とし、食品に関しては国内リスク10種と海外リスク15種をリスク選定してリスクの分析、評価を行っています。

検証の結果、食品27品目に関して重要なリスクとして指摘されたのは、輸入品の価格高騰のリスク(飼料穀物、小麦、大豆、なたねなど)、労働力・後継者不足のリスク(果実、野菜、畜産物、水産物など)、生産資材の価格高騰等のリスク(肥料、燃油費の高い品目)、温暖化や高温化のリスク(水産物)、家畜伝染病のリスクとなっています*4

また、食品産業に関して重要なリスクとして指摘されたのは、国内におけるリスクでは、需要急変(外食産業)、サプライチェーンの混乱(食品卸売業、小売業)、海外におけるリスクでは、輸入原材料の減少/価格高騰/品質劣化となっています*5

重要なリスクには輸入や国内物流と関連の深いリスクが多いことが窺える結果となっており、同検証からも「物流」の重要性が分かります。

なお、同検証では国内におけるリスクの原因事象として有事は対象外となっています。これは日本が当事国となるような有事であり、発生すれば輸入や国内物流に深刻な影響が発生することは明らかです。近年の有事リスクの高まりを考慮すれば、重要リスクとして認識する必要があるといえます。


【参考文献】
*1 山下一仁(2022)『日本が飢える!世界食料危機の真実』, 幻冬舎, 212頁
*2 食料安全保障に関する研究会(2010)「我が国の「食料安全保障」への新たな視座」, 13-14頁,
  https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/food_security/pdfs/report1009.pdf
   (アクセス日2024年1月8日)
*3 農林水産省(2022)「「食料の安定供給に関するリスク検証(2022)」の公表について」,
  https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/220621_14.html
  (アクセス日2024年1月8日)
*4 農林水産省(2022)「食料の安定供給に関するリスク検証(2022)」, 31-32頁
  https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/attach/pdf/220621_14-8.pdf
  (アクセス日2024年1月8日)
*5 農林水産省(2022)「食料の安定供給に関するリスク検証(2022)」, 44-45頁
  https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/attach/pdf/220621_14-8.pdf
  (アクセス日2024年1月8日)